関節リウマチ
はじめに
関節リウマチは朝起きた時の手のこわばり(関節の動かしにくさ)、関節が痛いなどの症状があります。また、関節だけでなく身体に影響を与える慢性炎症性疾患(自己免疫性疾患)であり、一部の方には皮膚や目、肺、心臓および血管を含む多種多様な障害を起こす可能性があります。関節リウマチは早期診断が重要です。
治療法
- 基礎療法(生活改善・栄養療法)
- 薬物療法
- 手術療法
- リハビリテーション(理学療法・作業療法)など
診断方法
- 関節の腫れや圧痛を触診で確認
- 血液検査
- レントゲン検査
- 関節エコー検査
これらの検査を行い、現在の疾患活動性(炎症の程度)や進行度(関節の破壊の進み具合)、進行のリスク因子の有無(リウマトイド因子や抗CCP抗体が陽性か陰性か)に加えて、間質性肺炎などの呼吸器合併症の検索も考慮します。
関節の破壊や変形を抑制し、痛みを抑えて日常を過ごすために専門的な治療(抗リウマチ薬、免疫抑制薬、生物学的製剤等)を継続して行うことで、症状がおさまり病気をコントロールできている「寛解(かんかい)」という状態を目指します。 関節リウマチ(RA)は慢性(進行中)の自己免疫性疾患であり、手のこわばり、両手足の関節の腫れや痛みで発症します。関節リウマチは自己免疫により生じる関節滑膜の炎症を特徴とする全身の炎症性疾患です。普段は外から体の中に入ってきた異物を排除する免疫系のシステムが誤って自分自身の正常な細胞や組織を攻撃してしまう病気です。リウマチで炎症が進むと強い痛みが生じ、いずれ軟骨や骨が破壊され、関節が変形し、両手足で機能障害が生じるため日常生活動作(activity of daily living:以下 ADL)や生活の質(quality of life:以下 QOL)が低下することがあります。関節の破壊は発症6ヵ月以内からはじまり、最初の1年間の進行が最も顕著とされていることから早期診断、早期治療が重要です。 リウマチ・膠原病は治療期間が長く、ADLやQOLが低下すると家族や施設での介護が必要になるなど、社会的負担となる病気でもあります。
関節リウマチの発症年齢
関節リウマチは日本の人口の0.6〜1%、患者数は82.5万人と推定されており、好発年齢は40歳~60歳で男女比は1:3で女性に多い病気です。高齢化もありどの年齢でも起こり得る病気ともなっています。60歳以上で発症した関節リウマチを「高齢発症関節リウマチ」と呼んでいます。
【参考】関節リウマチ診療ガイドライン2020
関節リウマチは代表的な「膠原病」であり、膠原病は皮膚・靱帯・腱・骨・軟骨などを構成する蛋白質であるコラーゲンに全身的に障害を起こしたり、血管に炎症を生じて様々な臓器に炎症を起こす病気の総称です。原因不明の発熱や湿疹などの症状も見られます。また小児においても小児リウマチ性疾患(膠原病)などがあり、この疾患は成人だけの病気ではありません。
主な原因と予防
リウマチの病因・病態は未だ十分に解明されておらず、根治的な治療法はありませんが、関節リウマチの場合は遺伝的要因、免疫異常と環境的要因が複雑に組み合わさることにより発症すると考えられています。近年の研究により、リウマチになりやすい遺伝子は100種類程あると言われ、代表的な遺伝子は「HLA-DRB1」という白血球の遺伝子があります。「遺伝的要因」は関節リウマチの発症に10〜15%関係していると考えられています。一方で、最も関係が深いと考えられている環境的要因は喫煙です。喫煙の他にも、歯周病、腸内細菌の乱れ、ストレス、慢性の呼吸器感染症等免疫系の活性化も原因と推測されています。
関節リウマチの予防
関節リウマチの原因は現在解明されていない為、完全な予防法はありません。しかし、研究者の報告によると歯周病や喫煙が関節リウマチを引き起こす原因として考えられています。そのため、歯周病の予防や禁煙が関節リウマチの予防に繋がる可能性があります。 歯周病は歯垢や細菌が歯と歯の間に詰まることで発症します。つまり、歯周病を予防する為には歯垢が付着しないようにすることが大切です。普段から丁寧に歯磨きを行い、定期的な歯石除去を行いましょう。特に関節に痛みを感じると歯磨きが疎かになることがあります。歯磨きしづらいと感じた場合には、電動歯ブラシの使用等を検討し、歯垢が溜まらないようにしましょう。また他の研究者によると肥満の関節リウマチを発症する可能性が高くなると指摘しています。 関節リウマチの進行は個人差がありますが、早い人だと発症から6ヶ月で関節破壊がはじまり、2年以内に急速に関節が破壊されることがあります。そのため、少しでも早く発見し治療を受けることが大切です。関節リウマチの治療は腫れや痛みを抑えるだけではなく、良い関節の状態を保つことも目的としています。
主な症状例
関節リウマチの初期症状は、手や足の指の関節が左右対称に腫れ、朝方にこわばるようになります。このように起床時の手のこわばりは更年期等の女性ホルモンの低下に伴う関節痛やヘバーデン結節などの変形性関節症でも見られますが、関節リウマチの場合は数分ではなく1時間以上手のこわばり続くという特徴があります。 膠原病に共通する症状は、長期に症状が継続している方、特に関節痛、筋肉痛、皮膚、粘膜の異常、寒冷刺激でレイノー症状(指先が白色、紫色、赤色など変色する)が多くみられます。 痛みは手首や手指の関節に生じることが多いですが、足の指も痛くなることが多く人によっては膝関節や股関節にもリウマチが進み、歩行が困難になり日常生活動作に影響を及ぼすこともあります。このように手のリウマチだけでなく足に症状が出ることもあります。 また、炎症の強さによっては、関節症状だけでなく発熱や倦怠感、食欲不振などの全身症状が表れます。特にリウマチによる肺の病気も気をつけなければいけませんのでリウマチとなった場合には胸のレントゲン検査をすることもあります。また骨粗鬆症になりやすく、貧血やリンパ節が腫れたり、血管炎などを併発することもありますので全身のチェックをすることもあります。
- 朝のこわばりがある(使っているとだんだんと楽になることもあります)
- 手が握りにくい
- 関節の腫れや痛み
- ペットボトルを開けづらい
- 靴紐が結びにくい
- 足の付け根が痛む
- 血液検査で異常値がでた(リウマチ因子、抗CCP抗体、抗核抗体が陽性)
- 血縁者にリウマチや膠原病の人がいる
【参考】リウマチ学会発行 チェックシート
診察の流れ(関節リウマチの場合)
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STEP.1
診察
問診・触診を行います。症状や関節の腫れ・圧痛などを診ます。
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STEP.2
各種検査
血液検査・関節レントゲン(骨の変形や骨破壊の確認)・関節エコー検査。
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STEP.3
診断
診察・検査から総合的に診断し、患者さんのライフスタイルを考慮して治療計画を作成。
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STEP.4
治療開始
治療計画に沿って治療を開始します。
主な検査方法と診断
関節リウマチは他の疾患の症状と似通っているところがあるために、関節リウマチかどうかを診断するには問診、各種検査など多角的に専門医が行います。特に関節の痛みや腫れで早期の関節リウマチを判断することは困難な場合があります。 例えば関節リウマチに似た症状は変形性関節症でも見られます。このようなことから検査は慎重にされます。
血液検査
関節リウマチかどうかを確実に診断するために、まずは血液検査でリウマチ因子(RF)、抗CCP抗体、抗核抗体、MMP-3などを測定します。血液検査を行うことにより、関節リウマチの可能性を調べるとともに他の病気との鑑別を行うことが可能になります。
画像検査
X線(レントゲン)検査、関節エコー検査、CT検査、MRI検査などで関節や臓器の状態を画像・映像で確認します。
治療について
リウマチの治療法としては、大きく「基礎療法(日常生活での注意点の指導)」「薬物療法」「リハビリテーション」「手術療法」の4つに分類することができます。関節リウマチの治療ガイドラインによれば、薬物療法を中心に総合的な治療がされます。 例えば、経口薬であるメトトレキサートから開始し、経過を見ながらそれぞれの症状に適している生物学的製剤やJAK阻害薬、他の抗リウマチ薬の併用などを選択していきます。メトトレキサートは関節の炎症を引き起こす免疫細胞などの働きを抑え、関節リウマチの進行を抑える働きがあります。関節の痛みや腫れを軽減するために、破壊されて変形した関節の機能を回復手術が必要な場合、または外科的な評価・処置等が必要な場合は整形外科と連携して治療にあたります。 ご高齢の方の関節リウマチ治療は、薬による副作用を生じ、さらに副作用が重症化しやすいので、症状を良くモニターしていくことが要求されます。 以前は「治らない病気」と言われることもありましたが、リウマチの治療は日々進化しており、適切な判断と治療を継続することで日常の生活を送ることが可能です。関節リウマチの治療目標は「炎症を抑える」「骨や関節の破壊を抑える」「ごく普通の生活ができるようになる」ことです。
今後の見通し
関節リウマチ患者さんの予後について、厚生労働省によると
“これまでは、RAの患者の日常活動(activity of daily life; ADL)では、発症10年では5%が臥床患者、80%が何らかの障害を有し、15%が健常人同様の生活を営んでいるとされてきた。しかし、早期診断・早期治療の開始と有効な薬物療法の出現により、臨床的寛解のみならず、X線上の関節破壊を阻止できる構造的寛解、さらには関節機能の正常化する機能的寛解が可能となりつつあり、患者のADLは著しく改善しつつある。これまではRAの関節予後のみが注目されてきたが、RAの生命予後は健常人と比較すると約10年悪い。死因としては、欧米では心血管系合併症が注目をされているが、わが国では肺炎などの感染症、二次性アミロイドーシスなども生命予後の増悪に深く関わっている。”
としています。 関節リウマチの痛みや炎症を軽減し、病気の進行を遅らせるために効果的な方法として早期診断と効果的な治療は非常に重要です。関節リウマチはコントロールできない側面もありますが、治療を継続したうえで次のような方法で生活を改善することができます。
休む
関節が炎症を起こしていると、関節や近くの軟部組織構造(腱や靭帯など)が損傷するリスクが高くなります。このような炎症を起こした関節は休ませる必要があります。しかし、軽い運動することは依然として重要です。関節の可動域を良好に保ち、全体的に良好なフィットネスを維持することは、関節リウマチに対処する上で重要です。
運動
一般的に関節リウマチの一部の人々は不活発になります。動かないことで関節運動の低下および筋力の減少につながる可能性があり、痛みや疲労を増加させます。定期的な運動はこれらの影響を予防することに役立ちますので、医師、理学療法士や作業療法士に相談のうえ安全に運動することが必要です。有益なトレーニング方法には下記のようなものが考えられます。
- 関節の動きを維持および復元するための可動域を維持する
- 筋力を維持するための運動
- 持久力を高めるためのエクササイズ(ウォーキング、水泳、サイクリングなど)
関節リウマチや治療薬の影響による合併症は呼吸器疾患や骨粗鬆症・シェーグレン症候群・糖尿病・心筋梗塞・脳血管障害・リンパ腫などがあります。また抗リウマチ薬や生物学的製剤を服用して免疫の働きを低下させている反面、感染症にかかりやすくなりますので関節リウマチそのものの管理と同時に体調管理や感染症対策も必要です。
関節リウマチに関する医療費支援制度
関節リウマチの医療費の負担を減らすためにいくつかの公的制度が利用できます。
高額療養費制度
ひと月に支払った自己負担額が特定の上限を超えた場合に、超えた分の金額が公的医療保険から支給される制度です。自己負担額の上限は、年齢や所得によって異なります。
限度額適応認定書
入院費などが高額になる場合、事前に申請して「限度額適応認定書」を医療機関に提出することで、窓口で支払う金額を自己負担限度額までにおさえることができます。
高額医療費貸付制度
高額医療費の払い戻しが見込まれる場合に当面の医療費を貸し付ける制度です。
小児慢性特定疾病の医療費助成制度
小児慢性特定疾病に該当すれば、「高額療養費制度」に加えて「小児慢性特定疾病の医療費助成制度」が利用できる可能性があります。
その他の制度
身体障害者福祉制度、特定疾患利用制度があります。
健康保険に関する問い合わせ・申請は市町村、社会保険事務所の窓口へ
- 国民健康保険は市区町村の担当課
- 社会保険は管轄の社会保険事務所
膠原病とその関連疾患の多くは特定疾患に指定されており、公費補助対象になっていますので都道府県の保健所にお問合せ下さい。その他、地域の税務署では医療費の確定申告による税の免除があります。
よくある質問(FAQ)
関節リウマチは遺伝性ですか?
研究者によると特定の遺伝的変異および非遺伝的要因は、関節リウマチを発症するリスクに影響するとしています。非遺伝的要因には性行為や刺激物や汚染物質の影響が考えられます。ヒト白血球抗原(HLA)遺伝子の変異を持って生まれた人々は、関節リウマチを発症する可能性が高くなります。
関節リウマチの4つの段階とは
ステージ 1
初期段階の関節リウマチでは関節の周りの組織が炎症を起こしています。痛みやこわばりを感じていることがありますがX線検査では骨に異常は見られません。(滑膜は増殖を始めている)
ステージ 2
炎症で関節の軟骨を傷つき始めており、軟骨の下に軽度の骨の破壊が見られることがあります。また可動域の減少に気付くことがあります。
ステージ 3
炎症は非常に重篤で、骨を傷つけ始めています。ステージ2よりも痛み、こわばり、可動域がさらに狭くなり、身体的な変化が見え始めるかもしれません。関節が脱臼などを起こしやすくなります。
ステージ 4
炎症は止まりますが、関節は悪化し続けます。激しい痛み、腫れ、こわばり、可動性の狭くなり、または動かなくなります。
関節リウマチの寛解(かんかい)とは
関節の変形の進行を防ぎ、症状が一時的、または継続的に落ち着いて安定している状態。完全に治った状態の完治ではないが治療によって関節リウマチに伴う関節の変形や痛みが軽くなる、あるいは消失した状態です。しかし完治ではなく、関節の変形や痛みの再発の可能性が否定できない治療の有効度について表現しています。